173.未来都市TOKYOのど真ん中、ミルクワンタンで昭和にワープだ。

ミルクワンタン鳥藤

 有楽町駅前が再開発されイトシアとなり、東京駅周辺では巨大なツインタワー、グランドトーキョーが摩天楼の如くそびえ立つ。東京フォーラムの近くには丸の内ブリックスクエアが完成し三菱一号館が復元され、続々とこの界隈に新しい都市が誕生している。この辺りを歩いていると「未来世紀ブラジル」と言う映画を思い出し自分が時代に取り残された様に感じてしまう。
 そんな未来都市TOKYOだが、有楽町から東京駅に続くJRの高架下辺りは、昔ながらの居酒屋などが軒を連ね、ほっと出来るスポットだ。「東京駅への近道」と書かれたガード下を抜けると懐かしい昭和の景観を色濃く残した別世界となる。カタカナで「ミルクワンタン」と書かれた暖簾をくぐると誰もがほっこりと出来る空間にワープ出来るのだ。屋号は『鳥藤』だが、そう呼ぶ人は殆ど居らず、「ミルクワンタン」で通っている。カウンターに小さなテーブル席と奥に座敷もある。気さくなお母さんと話をしながら呑むならば、カウンターが良い。
 此処は酒さえ決めてしまえば、後は黙って座っていれば良い。マスターが黙々と作る料理が次々と出てくるのだから、酒も愉しく進むのだ。焼き鳥、焼き魚、季節の野菜料理、それに納豆チャーハンなどが続く。最後の〆は看板メニューのミルクワンタンだ。その名の通り、牛乳で仕込んだ和風クリームシチューにワンタンがたっぷりと入っており、躯に優しい一品だ。
 この店の不思議なところは、どれだけ呑んでも大体お勘定が一緒なのである。細かく計算をしている姿を見た事が無いが、今日はちょいと多く呑んだかなと思っても殆ど一緒なのだ。それがまた、申し訳無い程に安いのでとても懐に優しい酒場なのである。戦後すぐに始めた名店は、今も変わらず暖簾を出している。
ミルクワンタン鳥藤 千代田区丸の内3-7-9
03-3215-1939