2007-10-01から1ヶ月間の記事一覧

23. 寿司は兎に角「握り」という御仁に、鮨たなべは薦めない。

行きつけのすし屋と云うのは、如何に居心地が良いかに尽きるのではないか。それ故に皆が此処が美味い彼処が良いと言い、様々な店を知るのであろう。ネタの良さは云うまでもないが、仕事の仕方は酢で〆めたり、煮たり、醤油漬けにした江戸前寿司から鮮魚本来…

22. 本当に美味い生ビールはいつもより2杯は多く飲めるのだ。

その昔、八重洲に小さなビアホールが在った。過去形なのは、今はもう店をたたんでしまったからだ。僕が初めて、その「灘コロンビア」を訪れたのは30歳になる頃だから丁度17,8年前のことだ。ご主人の新井さんは常連さん達から慕われた気さくなお爺さんと云う…

21. 東十条、埼玉屋。焼き場の大将は、まるで団十郎歌舞伎だ。

仕事帰りにちょっと立ち寄って安酒にもつ焼き数本喰って家路に着く。巷のもつ焼きと云えば殆どがこの類いである。ところが、京浜東北線の東十条駅を降りて操車場の坂道を下った先に在る「埼玉屋」は、この常識を真っ向から覆してくれる。ここは、提供する素…

20. 銀座二丁目の辛来飯で京浜東北の旅。

仕事で有楽町方面に行く時、時計が夕刻を廻ると「よしひろ」のおでんか「卯波」の酒と往きたい処だが、その前に上がってしまうと酒にはチト早いので、小腹を埋めに喫茶「ニューキャッスル」へと向かうことになる。古くから銀座の地に店を構え昭和の香りが漂…

19. 根岸の里の羽二重団子は江戸から続く、元祖買い食いの友だ。

芋坂の団子下げたる賀客かな 久保田万太郎が正月の風景を詠った句である。根岸周辺は江戸の頃から文人墨客が好んだ土地らしいが、「羽二重団子」は多くの文人に取り上げられている。夏目漱石の「吾輩は猫である」や泉鏡花の「松の葉」、また正岡子規もまた正…

18. 大阪・新世界の味が恋しくなったら、真っ先にたけちゃんへ行け。

三田の「たけちゃん」は、東京に居ながら新世界の味を堪能出来る串かつ屋だ。田町駅前を渡り、慶應通りを入るとすぐ右側に暖簾が揺れている。藍色に白文字で串揚げと染め抜かれた暖簾をくぐるとそこはリトル大阪・新世界である。大阪ではふつう串かつと呼ぶ…

17. いしいの天ぷらで、夫婦円満の秘訣を知る。

築地本願寺を通り抜け、晴海通りの露地を入った処に昔から佇む家庭的な小さな天婦羅屋が「天ぷら いしい」だ。お世辞にも小綺麗な店とは云い難いが、とても心和む夫婦が二人で営む街の天婦羅屋さんである。場所柄、築地で働く連中が多いのでスタミナ補給の効…

16. ゼイタク煎餅の素朴な味と香りで遠い母を想う。

東京の街を散策していて、毎度々々お店を見つけると買ってしまう菓子がある。買ったその場で食べながら散歩したり、半分だけ残し家でのお茶受けに楽しむことも多い。それが「ゼイタク煎餅」なる仄かに甘い煎餅だ。子供の時分からの大好物で、もうかれこれ40…

15. ての字は、うなぎが庶民の味だった江戸の頃が伺える老舗だ。

鰻の蒲焼きが無性に食べたくなる時がある。時間と金が許せば南千住の「尾花」か麻布台の「野田岩」まで出向く。江戸の風情に触れたければ、人形町「喜与川」か神田明神下「神田川」が良い。しかし、日々そう贅沢を云う訳にもいかないものである。 昼時に気軽…

14. 炭火の向うから男を鍛えてくれる牛赤身の名店、ハッチとノラ

井の頭線池の上駅の踏切を渡り、まっすぐ進むと左手に赤ちょうちんの灯りが見えてくる。その外観も格子戸を開けた店内の雰囲気も、まるで地元の焼き鳥屋風情だが、ここ「ハッチとノラ」は本格炭火焼きの牛肉専門店である。 巷に多く在る霜降り牛崇拝に疑問を…

13. 味芳斎の爺さんが仕込む牛丼で疲れを吹き飛ばす。

芝大門の駅を上がると、芝神明商店街と云う小さな通りに出る。そこから芝大神宮の方へ歩くとすぐの角地に小さな中華料理店がある。「味芳斎」(みほうさい)は、午後の仕込みや休憩時間中でも、いつでも「やってるよ」の看板が出ているので遅い昼飯に通える…

12.戦後の恋文横丁辺りの話が聞きたきゃ、みんみんだ。

餃子はチャオツと読む。実はこれ蒸したりスープで煮たものを謂う。本場、北京では焼餃子は鍋貼児と云い、カオテアルと呼ぶ。鉄の鍋に餃子が貼り付いた子供の様だからだろうか。こんな雑学をいつも『みんみん羊肉館』のご主人に伺う。(みんは,王編に民だが…

11.酒好しモツ旨し家族良し。それが縄のれんの愉しみだ。

フランス料理店等で出されるリードヴォーは、ワインに合い実に美味い。牛の胸腺と膵臓の部位であるが、これが仔牛の物になるとシビレと呼ばれる。このシビレもまた旨い。英語で胸腺をSweet Breadと呼ぶが、スィートブレッドが日本語になり訛ったのがスィブレ…

10.栄坊のバンタン呑んで昭和を想う。

或る時、かむろ坂下の赤ちょうちんに「元祖バンタン」と書いてあるを見つけた。この店も良い塩梅の居酒屋だが、そこで出す酎ハイがバンタンと呼ばれていたのだ。サワーの発祥は「もつ焼き ばん」だが、「バンタン」は謎である。 それから暫くの間、はて「バ…

9. 珍々堂のあられで酒が呑める大阪人が羨ましい。

大阪は西成地区は、串カツやどて煮など安酒のアテになる旨い喰いもんの宝庫だ。金曜とかに大阪に出掛ける時などは、仕事が終わってもそのまま泊まる事にして、夜の新世界辺りを食べ歩くのが好きである。 天王寺阿倍野の『明治屋』の「きずし」で一献つけて、…

8.日曜の丸好酒場で長閑な午後。

京成線の八広駅から水戸街道方面へ歩いて行くと交差点の角地に「丸好酒場本店」の暖簾が揺れている。その暖簾には、「元祖 レバ刺」と書いてあるのだが、その名の通り、ここの牛レバ刺し、ハツ刺しはすこぶる美味い。冷蔵庫から取り出したデッカい牛レバーの…

7. 巴裡 小川軒のショコラスフレは、秋の味。

雨降りの休日、外に出ず一日中レコードを聴いて過ごすのも良いものだ。珈琲を煎れて、チョコレートケーキを食べる。僕の中で、チョコレートケーキは秋の味である。そして、子供なんぞに食べさせたくない大人のチョコレート菓子が『巴裡 小川軒』の「ショコラ…

6. 目黒権ノ助坂、我が町のビストロ在りき。

目黒権ノ助坂は店の入れ替えが激しい処だ。そんな中、新参者ながら大変な賑わいを見せているのが『立ち飲みビストロ・シン』である。この店の名物が「メリメロ焼き」なる一品だ。メリメロとは仏語で「ごちゃまぜ」と云った意味であるが、レバー、ハツ、軟骨…

5.落語じゃないが、さつま芋は目黒に限る。

毎年10月になると目黒不動尊にて「甘藷祭り」が行われる。江戸時代、人々を食料不足による飢餓から救うため、サツマイモの研究をし、栽培と普及に尽力を注いだ蘭学者が青木昆陽だ。サツマイモは「甘藷」(かんしょ)と呼ばれ、どんな土地でも根を付け育つの…

4.以志井の鯛のたい。

随分と長い間「鯛めし」が喰いたくなると、六本木『与太呂』が定番であった。鯛は鱗(うろこ)と骨が硬いので、どうも家では食べないのである。腕のいい料理人に裁いてもらって、調理してもらうのが一番美味しいのである。『与太呂』の予約が取れず、それで…

3.本郡散策で、明月堂の甘食を買い喰い。

本郷三丁目界隈には昔から良い店が数多く在る。『ルオー』、『こゝろ』、『麦』といった昭和の薫り漂う喫茶店も多い。ルオーはココアが旨い。ケーキの老舗『近江屋洋菓子店』のバウムクーヘンは珈琲、紅茶の茶受けにもってこいである。ユーハイムでも結構イ…