7. 巴裡 小川軒のショコラスフレは、秋の味。

ショコラスフレ

 雨降りの休日、外に出ず一日中レコードを聴いて過ごすのも良いものだ。珈琲を煎れて、チョコレートケーキを食べる。僕の中で、チョコレートケーキは秋の味である。そして、子供なんぞに食べさせたくない大人のチョコレート菓子が『巴裡 小川軒』の「ショコラスフレ」だ。
 創業100年以上と云う西洋料理の老舗「小川軒」。明治38年、汐留に店を開き、その2年後に新橋へ移転。先々代の創業者、小川鉄五郎は「新橋駅前に小川軒ができ他のではなく、小川軒の前に新橋駅ができたのだ」との名言が語り継がれていると云う。そして戦後の昭和39年に代官山に移転したのだが、東京オリンピックの選手村なども近くに出来たので、渋谷界隈の発展にいち早く目を向けたのであろうか。今は創業者の孫三人が、それぞれ代官山小川軒、目黒小川軒、御茶ノ水小川軒を受け継いで営業している。
 僕が初めて代官山の小川軒を訪れたのは、25,6年程前だ。小川軒が誇る小皿料理が絶品だった。懐石料理よろしくアン肝のフォアグラ風、エスカルゴ、等々小皿で次々と出してくれるのだ。この小皿料理スタイルを築いた二代目の小川順氏は既に他界していたので、僕の知る小川軒は三代目からである。小川軒は、今でも何かの記念日などに使いたいハレの店だ。
 普段のお使い物、手土産に最適なのがここの焼き菓子「レイズン・ウィッチ」だろう。これは僕が子供の頃に戴き物で食べ、ずっと忘れられない味となった一品で手土産の定番だ。だが、自分へのご褒美として家に買って帰るのは「ショコラスフレ」に限る。チョコレートを練った生地は小麦粉を使わずスフレーに焼き上げ、甘過ぎない生クリームをたっぷりで仕上げたロールケーキである。見た目は素朴だが、フワフワな食感は誰だって虜になるに違いない。
 小川軒の洋菓子店は、新橋汐留近くと目黒郵便局並びに在る。この「ショコラスフレ」、一個300円。是非、大人のご褒美に食べてもらいたい菓子である。
巴裡 小川軒 
新橋店:03−3571−7500
目黒店:03−3716−7161