12.戦後の恋文横丁辺りの話が聞きたきゃ、みんみんだ。

みんみん焼き餃子

 餃子はチャオツと読む。実はこれ蒸したりスープで煮たものを謂う。本場、北京では焼餃子は鍋貼児と云い、カオテアルと呼ぶ。鉄の鍋に餃子が貼り付いた子供の様だからだろうか。こんな雑学をいつも『みんみん羊肉館』のご主人に伺う。(みんは,王編に民だが何故か変換出来ず。)
 渋谷道玄坂に「恋文横丁」と云う一角が在った。終戦後、恋文を書いてもらう代筆屋が居たため、こう呼ばれた処だと聞く。満州から引き上げた者たちが様々な屋台を開き、商売を始め復興に向けていた頃である。当時、豚肉が高価なので、安く手に入り易い羊肉を使って餃子を出しいた店がみんみん羊肉館であった。密集していた店々も昭和40年頃の大火により大半が消失し、ここも移転したそうだ。   
 羊の肉は独特の匂いがあるので、それを消しより美味しい味にしようと先代が考案したのがニンニク入りの餃子だと謂う。これが、たちまち評判を呼び、多くの店でもニンニク入り餃子を始めたそうだ。戦後復興後の高度成長に伴い羊肉がマイナー化し、豚肉の餃子が主流になったので、ここでも羊肉餃子は姿を消した。また、昔は二階に羊肉しゃぶしゃぶ用の大きな専用鍋が有ったのだが、ボヤ火事を出した後、現在の一階のみの営業となる。これはとても残念だった。
 店は小さくなったが、どっこい今も変わらぬ美味さの餃子を出してくれる。焼餃子も美味いが、スープに入った水餃子が素晴らしい。餃子を食べた後にご飯を入れてもらえば、絶品汁かけ飯になる。旨い餃子を出す店は数知れずだが、ここのは渋谷みんみんの味である。僕はこの味に馴染んでいるのだ。
 さて、ここに来たら、まずは腐乳豆腐をアテに老酒がいい。腐乳は乳酸菌の力で腸を整えてくれる。我が国のぬかみそ漬けも中国の腐乳も同様に昔の人の知恵は素晴らしい。他にも羊肉の炒め物など一品料理も旨いものばかりだ。
 大好きだったフレッシュマンベーカリーもカスミコーヒーもずっと前に無くなってしまったが、みんみんの餃子は気の良い二代目がしっかりと守ってくれそうだ。
みんみん(王民王民)羊肉館 渋谷区道玄坂2-7-5
03-3461-8262