20. 銀座二丁目の辛来飯で京浜東北の旅。

辛来飯

 仕事で有楽町方面に行く時、時計が夕刻を廻ると「よしひろ」のおでんか「卯波」の酒と往きたい処だが、その前に上がってしまうと酒にはチト早いので、小腹を埋めに喫茶「ニューキャッスル」へと向かうことになる。古くから銀座の地に店を構え昭和の香りが漂う店は、扉を開けると独特な香辛料の匂いが鼻を刺す。先代の可愛いお爺ちゃんが作った名物「辛来飯」(カライライス)の香りだ。今は娘さんのご主人の代に移ったが、その二代目ももう可成りのご年配である。
 先代が洒落好きだったのか、辛来飯のメニューが変わっている。大井、大森、蒲田と或る。要するに量が大井(多い)、大盛り、その上と続く訳である。しかし、多い筈の大井は減量中の女性向き程度の量だ。大森でようやく普通盛り程度、蒲田あたりが男性諸君には丁度良いボリュームである。きっと、昔の連中は体も小さかったからこの量だったのだろうか。この後に呑みに行くならば大森で良いが、これで済まそうと云う向きには蒲田が良い。どちらも目玉焼きが乗っていて美味い。以前はその上に川崎も在ったが、辞めてしまったらしい。
 辛来飯は野菜と果物をじっくりと豚骨スープで4時間煮込み、にんにく、生姜で味を整えている。また、醤油と味醂を隠し味に使った和風ベースのカレーだ。そしてこの辛来飯には一切肉が入っていない、とてもヘルシーなんである。半熟の目玉焼きをスプーンで崩しながら喰うのがいい。食後のコーヒーもカレーの辛さに追い打ちをかけるように舌に刺激を与えるのだが、これもまた妙に病み付く美味さなのである。
 目玉焼き付きの大森が630円、コーヒー、紅茶も一杯210円である。銀ブラの帰りに小腹が空いたら迷わずニューキャッスルを訪れてみて欲しい。昭和21年から続く喫茶店ならではの、ホッと出来るひとときが待っている筈だ。
辛来飯とコーヒーの店 ニューキャッスル 中央区銀座2-3-1
03-3561-2929