1.九月の八王子、鶯啼庵の楽弁当で故人を偲ぶ。

cafegent2007-09-27

 八王子インターの近くに構える京懐石料理の名店『鶯啼庵』(おうていあん)は、その佇まいだけでも充分に行く価値があるのだが、料理も大変素晴らしい。庭園が深紅に染まる紅葉の季節に合わせて、松茸の土瓶蒸しを頂くと良いだろう。

 先日、古い友人クリ坊こと栗原浩兄の十回忌を偲ぶ為に八王子の墓苑『萩霊園』へ集まり、お墓参りをした。クリ坊は、元は貴兄のバンド仲間であったが、一緒にテニスをしたり映画や音楽などの趣味を通して仲良くしてもらうようになった。バイクが好きで、ハーレーの輸入元へ就職したが、そこで出会ったみどりさんと結婚し、その後に『ハリウッド・ランチ・マーケット』へ転職した。

 当時、クラブキングが発行した小さな写真集「SMILE ROCK」の中の広告写真でハリラン・スタッフの集合写真の中に笑顔のクリ坊の姿が残っており、少し前に久しぶりに富塚兄と一緒にページを開いたばかりだった。

 十年はあっという間に過ぎてしまったが、小言爺ぃのクリ坊の姿は今でも深く残っている。テニスをしても、キャンプをしても、いちいち何かと怒られていた気がする。お参りの後、そんな他愛無い話を思い出しながら、昼食の宴となった。座敷には懐かしい『鶯啼庵』の懐石、楽弁当が用意されていた。三段の重箱の抽き出しの中には彩とりどりの種々の前菜が入っている。ここの細工料理は冷めても美味しい。絵本の挿絵で知られる画家、村井宗二の描く鶯の絵も心を和ませてくれる。

 十年前の通夜の席では、彼が大好きだったビーチボーイズの名作「ペットサウンズ」が夜通し流れていたっけ。
 この日は長閑な日和の中、秋鳥の啼く声に耳を傾け在りし日のクリ坊を偲んだ。

鶯啼庵 八王子市尾崎町129
042-691-5500