100. 煙立つ宇ち多”の梅で春迎え

宇ち多”

 京成立石の仲店商店街に、多くの人たちから愛されている名酒場が在る。「もつ焼き 宇ち多”」は、親子二代に渡って通い続けるお馴染みさんも多い。 
 開店30分前頃になると表と裏の暖簾の前に長い列が出来るのである。毎日通う常連たちは裏の暖簾の前で挨拶を交わしながら、口開けを心待ちにしている。彼らの席には予め焼酎グラスやビアグラスが並べられるのだ。そんな中の様子を眺めながら待つひと時もまた愉しいのである。
 店内は40人が限度だが毎日、開店と同時に満席となる。いよいよ、焼酎の梅割りを呑み、煮込みやもつ焼きを楽しむ時間が始まるのだ。
 此処のもつ焼きは都内屈指である。初めての客はどう頼めば良いのか判らず一瞬不安になるが、店の人やお客さん、誰に尋ねても快く教えてくれる。此れもまた下町立石の魅力だな。
 味、焼き具合、部位と皆が自分のお気に入りの注文をする。僕の好物は「レバ素焼きの若焼き、お酢掛けて」だ。土曜はレバ生が無いが、表面をサッと炙る程度の若焼きが旨い。塩もタレもかけず、素焼きで炙り、其処へお酢を掛けてもらうのである。普通に「シロたれ」とか「ナンコツ塩」、「アブラ味噌」と云えば、宇ち多”の方で最高に旨い具合に焼いてくれるから、心配無い。酒は五つ半までだが、もう十分酔いが回るのだから、其れで良し。
 此処は値段の基準が180円である。もつ焼きも煮込みも焼酎も全て180円なので、重ねた数の皿を数えれば良い。酒は自己申告、酔い潰れ厳禁である。
 至福の時はあっと云う間、外の行列は途切れない。小一時間程度で〆るのが宇ち多”の作法である。朋アンちゃん曰く、新客、大いに歓迎だそうだ。皆が末長いお客さんになってもらいたいものである。
もつ焼き 宇ち多” 葛飾区立石1-18
03-3697-5738