106.浅草散歩の途中に丸千葉へ是非。寄席よりも愉しいのだ。

丸千葉

 浅草から日本堤方面へ歩くと途中「吉原大門」が在る。嘗(かつ)て江戸の街が賑わいを見せ、遊郭花盛りだった頃、此の辺りは四角い堀に囲まれた中、幕府の許諾の元に遊女たちを買う事が出来た。
 昭和三十三年の売春防止法が施行されるまで、341年もの長い間此の地で吉原遊郭は続いたのである。今、此の界隈はソープランドが数多く営業している。僕も若かった頃は、千束の旨い餃子屋か、土手の天麩羅や蹴飛ばし鍋で景気良くスタミナを付けて、仕事仲間たちと繰り出したものだった。僕もアト20年早く生まれて居たら、吉原遊郭で遊ばせて貰ったかも知れないナ。
 今ではトンと其っちの方はご無沙汰してしまったが、浅草、千束、日本堤、南千住と、此の界隈で酒を呑む事は多い。正直ビアホール、末っ子、大林、中江、弁慶、遠太い、双葉、中さと、等々本当に愛すべき酒場が多いのだ。早い時間から暖簾を出す店も在るので、天気の良い週末などは散歩がてらハシゴ酒なんてのが愉しいひと時である。
 さて、吉原大門から真っすぐに吉野通りへ歩いて行くと交差点のすぐ手前に「丸千葉」と云う大衆酒場が在る。居酒屋らしい風情のUの字カウンターと大テーブルが在り、4、50人は入ると思うが、何時でも賑わいを見せている。
 下町らしく肴類も量が多いのが嬉しい。ポテトサラダが人気で、先ず迷わず此れとビールから攻めるのだ。ソーセージ炒めも旨い、ちゃんとタコに切ってあるのも素晴らしい。でも、此処で一番の名物は料理や酒よりもホールの人なのだ。軽妙洒脱な語り口で酔っぱらいどもを陽気にさばいている。彼と客とのやり取りをアテに呑めば、実に愉しく酔って仕舞うのだ。
丸千葉 台東区日本堤1-1-3
03-3872-4216