105. 代官山ラ・カシータのテラスが心地良い季節を迎えた。

ラ・カシータ

 代官山に在るメキシコ料理の老舗「ラ・カシータ」はもう随分昔から好きな店の一つだ。学生時代はヒルサイドテラスの手前、ハリウッド・ランチマーケットの隣に在った。当時、外の「テラス」と云う物にとても大人びたイメージを抱き、太陽の下で陽気に飲み喰いをする事に憧れたものだった。
 今は代官山駅から恵比寿へ抜ける踏切近くのビルの2階に移転しているが、此処も矢張り窓に面したテラス席が設けて在る。週末の気持ちよく晴れた昼時は、恵比寿から散歩しながら訪れる事が多い。
 思えば、「ワカモーレ」なるアボカドのディップも「タコス」も全てのメキシコ料理は此の店で知ったのだ。テキーラやラムの味も同様だ、大人の味を随分と教えて貰ったのだな。
 「ラ・カシータ」は僕の中で「外国」だった。嘗(かつ)て「ポパイ」と云う雑誌を読み漁り、遠いアメリカにかぶれ、すっかり其の気になって居たが、金も無かったので此処のテラスで異国の雰囲気に浸り外国に行ったつもりで楽しんでいた。
 此処の名物、昔から変わらない味が「メキシカンライス」だ。海老や鶏肉をトマトで炊いたご飯だが、何処か懐かしい味である。また、自家製の「トルティージャ」が素晴らしく美味しい。’82年頃だろうか、生まれて初めて「タコス」なる料理を頼んだ時の事を思い出した。食べ方が判らないのである。パンのつもりで千切って細かくして野菜やトマトはサラダの様にして食べて居た。後から他の客が具材を挟んで食べているのを観て、我ながら抱腹絶倒したのであった。
 春分の日も近い、また此処のテラス席が気持ち良い季節になって来た。
ラ・カシータ 渋谷区代官山町13-4 セレサ代官山2F
03-3496-1850