150.北の大地で桜草を愛で、ふわふわのゆきむしロールを味わう。

ゆきむしロール

 年に一度、桜草が花咲く季節に実家のある札幌に帰省する。札幌が桜草の地と云う訳では無いが、我が父の道楽が桜草集めなのである。此れまで様々な趣味を愉しんで来た父が晩年ひたすら取り組んで居るのが桜草なのだ。
 シナトラに始まり、モダンジャズニール・ヤングライ・クーダー、イタリアオペラ、マリア・カラス、三味線、長唄、斉藤真一の瞽女(ごぜ)の絵収集と多彩多趣味の人生を歩んで来たのだが、半端じゃ済まない凝り性の性格なので、毎年毎年増えていく種類の数に圧倒されるばかりだ。
 さて、そんな北海道で新たな銘菓として人気が出始めているのが、もりもとの「ゆきむしロール」なのだ。以前から評判の銘菓「ゆきむしスフレ」のふわふわ感を生かしたロールケーキだが、その素朴な味わいは遠い昔に食べた懐かしい味だ。
 北海道では雪虫が飛び交う頃になると冬の訪れが来ると云う。真っ白な綿毛に身を包んだ小さな虫が町中に現れると、その何日か後に必ず雪が降るのだ。初雪の訪れを知らせてくれる冬のロマンをイメージしたお菓子の生地を用いてロールケーキにしたのが「ゆきむしロール」だ。ふんわりした生地はキタキツネの様な綺麗な色に焼き上がっており、しっとりとした舌触り。十勝産の牛乳で作ったフレッシュクリームの白さは正に初雪の訪れの様。甘すぎず、それでいて後を引くシンプルこの上ない洋菓子だ。
 深煎りのブラック珈琲に添えて出せば、口の中で大自然のカフェオレが生まれるのである。
 一年の内に二週間程しか咲いていない150種類の小さな桜草を愛でるために北の大地にやって来るのだが、帰りに空港で買う「ゆきむしロール」も実は目的の一つなのである。
もりもと新千歳空港店 新千歳空港ターミナルビル2F Fleur内
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