149.薄野だけが札幌の盛り場じゃない。金富士酒場でちょいと一杯。

金富士酒場支店

 札幌が誇るアーケード街「狸小路」も七丁目を過ぎた辺りから屋根も無くなり、ぐっと人通りも少なくなってくる。其のまま真っすぐ石山通り方面に向かう十丁目は昭和の風情を残した酒場が多く点在しており、吞んべい達の梯子酒に欠かせない通りだ。もう此の辺まで来ると狸小路とは呼ばないのだろう。
 明るい時分は人通りも疎らだが、処々に赤提灯が灯る夕方5時頃になると仕事帰りのサラリーマンたちの往来が増えて来るのだ。
 北海道旭川の地酒「男山」直営酒場と銘打つ「金富士酒場支店」もネクタイを緩めた連中の憩いの場として、開店早々から賑わいを見せる居酒屋である。決して愛想が良いとは云えない親爺さんと息子さんが切り盛りしているのだが、料理と酒の味は天下一品なので足を運んで仕舞うのだ。男山は燗を付けてもらい、焼き物を紙に書く。流石サッポロと云えるのが、値段の安さだ。男山は一合徳利が260円で毎回お新香などのお通しが付く。此のお新香も良い酒のアテになる。焼き物はもつ4串で220円、ぶた塩も4串250円である。立石「宇ち多”」も恐れ入る値段設定で驚くばかり。肉の間に入る玉葱も実に旨い。
 そして必ずと云って良い程皆が頼むのが、玉子焼きだ。熱々焼き立てで、半熟具合といい、中に入ったねぎといい素晴らしい一品だ。此処は二人で二千円もあれば、十分酔えて満腹になるだろう。
 盛り場ススキノに本店を構えているのだが、支店の侘びた佇まいが良い。札幌を訪れたら、観光客相手の店など避けて、是非とも地元の方々に愛され続けている老舗酒場の暖簾を潜って欲しいものだ。
金富士酒場支店 北海道札幌市中央区南2条西10丁目
011-271-7635