31.ふらり立ち寄り、旬を喰らう。これが栄寿司の醍醐味だ。

栄寿司

 京成立石の駅を降り右に折れると大きなアーケード街と並んで小じんまりした仲見世商店街が目に入る。いろんなお惣菜屋さんが立ち並ぶ中、角地に二つの暖簾が揺れる寿司屋が在る。先代が昭和16年に向島で創業し、昭和33年現在の場所に店を構えた「栄寿司」だ。
 開店当時から立ち食い専門店として開業し、昭和46年まで一貫十円を貫いた庶民の寿司屋である。その後、高度成長と共に少しずつ値段も変わったが、今は100円、200円、300円の設定で続けている。
 カウンターのみの付け台は、入って左側に二代目のご主人保坂さんが立ち、右側には娘さんの旦那さんの若き木村さんが立つ。ボードに書かれた本日のオススメも100円から200円の中で、選りすぐりのネタを用意している。秋から冬にかけては、広島産の生牡蛎を握ってくれる。また、早目に行けば、白子やあん肝、それにつぶ貝の肝の握りがすこぶる美味い。お馴染みさんは開口一番「白子とあん肝あるっ?」って云う程、人気がある。300円の生ウニは美味いがここに来ると何故か贅沢をした気になってしまうのが可笑しい。どれもネタが新鮮で美味いが、江戸前の煮帆立、煮穴子、煮烏賊などが素晴らしく美味い。特に煮蛤は柔らかく、ツメの具合も程よく馴染んで良い。
 ご飯も大きめに握るので、結構腹一杯になる。ここは二人で来るか、三人で三貫ずつ握ってもらうと色々と味わえるのでオススメだ。ビールの小瓶で何貫か握ってもらって、さっと帰る。これが立ち食いの醍醐味なのだ。
 先代が目指したのは、江戸前の寿司を毎日好きなだけ気軽に食べに来られる店、そして独り立ちする寿司職人の修行の場となる店がモットーだったと聞く。ここで修行をして独立した店も京成線沿線に幾つかあるそうだ。
 昼時の開店と同時に店はいつも一杯で在る。文庫本でも持って外でのんびり並んでいれば、すぐにでも美味い下町の寿司が味わえるのだ。
栄寿司 葛飾区立石1-18-5
03-3692-7918