35.愛らしく素朴な打吹公園だんごは、小さいながら頑固である。

打吹公園だんご

 僕は兎に角、団子が好きだ。これは日本全国何処に旅に出ても必ずその土地特有の名物となるだんごに巡り会えるからである。もちろん、東京にも羽二重団子、言問団子、豆大福など名菓を造り続ける老舗も数多く残っているが、地方の素朴な団子を見つけるのは旅の醍醐味でもある。
 11月18日、鳥取県倉吉で昔懐かしい「花嫁行列」が再現された。2月に行われた行事が好評だったので、開催となった。新郎宅を想定した豊田家住宅を出発し、賀茂神社で挙式、打吹(うつぶき)公園から白壁土蔵群まで花嫁行列が続く。古から城下町としての風情が漂う赤瓦や白壁土蔵の旧跡を歩くのは、何とも言えぬ懐かしさに包まれる。これからの寒い季節はこの辺りの温泉も実に良い。
 倉吉が誇る自然と言えば、打吹山だ。「森林浴の森百選」にも選ばれた打吹山は春咲く桜が有名だが、秋の紅葉も美しく、また冬の雪山も絶景だ。打吹山の袂にある打吹公園の春は、四千本の桜が咲き、四万本のツツジが見事に咲き誇り倉吉市民の憩いの寄り処となっている。
 ここを訪れたら、是非とも味わってもらいたいのが「打吹公園だんご」だ。地元の糯米(もちこめ)粉に蜜を入れ、練って、蒸して、また練ってを繰り返して出来た餅を、手亡(てぼう)豆の白餡、小豆餡、抹茶餡の三つで包んだ、小さくて素朴な三色串団子である。雛祭りに飾る菓子のお飾りかと思う程小さな団子は、とても愛らしい。
 明治十三年創業の石谷精華堂は現在、四代目の石谷文海さんが開業時と変わらぬ製法を守り、頑固一徹、だんご一筋に造り続けているのが良い。最近世間を賑わしているような賞味期限の改ざんや原材料の嘘偽りとは全くの無縁である。都内では毎日ではないが、三越高島屋でも手に入る。しかし、是非とも四季を通じて素晴らしい倉吉を訪れてこの素朴な味を堪能してもらいたい。
打吹公園だんご(石谷精華堂) 鳥取県倉吉市幸町459-1
0858-23-0141