38.明日は浅草鷲神社の酉の市。祈願帰りには末っ子の餃子かな。

末っ子餃子

 南千住辺りから泪橋を抜けるといわゆる「ドヤ街」なるエリアに出る。その昔、漫画「明日のジョー」の中で丹下段平矢吹丈を一人前のボクサーに育てた丹下拳闘クラブは泪橋の下に在った事になっている。今もこの辺は簡易宿舎、簡易ホテルが立ち並んでいるが、日雇い労働者達も高齢化し、住人たちも段々と少なくなっていると聞いた。
 土地柄、泪橋周辺には、その日受け取った日給で気軽に呑める安い酒場が沢山在る。但し、流石に男同士か、余程行き慣れていないと戸惑ってしまうだろう。泪橋から東浅草二丁目の交差点を右に曲がると、吉原大門に出る。この一帯、日本堤界隈は、その昔吉原遊郭の入口の吉原大門を中心に夜は随分と華やかだった。通りには、桜なべ「中江」や天婦羅「土手の伊勢屋」といった老舗が軒を並べている。
 吉原遊郭はその後、ソープランド街へと変わったが、懐具合が良い時は、豪勢に桜なべや江戸前の山盛り天丼、或いは「尾花」の鰻重でスタミナをつけて皆でソープ街へ繰り出したものだった。しかし懐具合がチト寂しいとなると、決まって浅草千束通り「末っ子」でしこたま餃子を食べて、吉原に消えたりしたのだ。一人前400円の餃子は皮がモチモチで中はとてもジューシー。大きさも小ぶりなので、ビールの肴に幾らでも腹に入ってしまう。
 今も大将が元気に餃子を焼いているが、昔はお嬢さんが店を手伝っており、この娘さんが浅草ッ子らしく、とても気っ風が良くて、可愛かった。何度か餃子をサービスしてもらった事があったが、僕らの中にお気に入りの奴が居たのだろう。きっと、今では子沢山の肝っ玉母さんにでもなっているのだろうか。
 明日は浅草鷲神社にて酉の市、「二の酉」である。商売繁盛祈願の熊手を持って焼きたての餃子でも頬張ろうか。
末っ子 台東区浅草5-17-8
03-3875-2274