42.紅葉見物の後は、ほんのり甘い志る幸の白味噌汁でほっこりしたい

志る幸利休鞭當 

 今年はどこも紅葉の時期が例年より遅く、京都も今がちょうど見頃を迎えている。清水寺高台寺も素晴らしいが、何といっても東福寺の上を渡る回廊「通天橋」から見下ろす紅葉は見事としか言いようが無い。赤い雲の絨毯と云った趣きだ。紅葉を愛でたあとは、雪舟寺の芬陀院(ぶんだいん)を訪れると良い。「鶴亀の庭」が素晴らしい。ここは、かの雪舟が涙でねずみの絵を描いたと語り継がれている庭である。丸窓の開いた茶室図南亭からの眺めは、まるで丸く額装された一枚の絵画そのものだ。
 東福寺から京阪電車に乗り四条駅で降りる。四条通りから木屋町通りへ入り、高瀬川を抜けた細い露地に出ると、そこにひっそりと構える汁の名店「志る幸」が在る。ここは、新撰組池田屋騒動のきっかけとなった古高俊太郎邸跡である。
 創業は昭和七年、カウンター席は能舞台を模し、三条、五条大橋の欄干に見立てた席は、僕には少し照れが出るが女性には大変受けが良い。「志る幸」定番の「利久鞭當」は扇形のかやくご飯に肴が五品付く。魚の焼き物や山菜煮浸しなど季節の肴は夏になると卵豆腐や鰻に変わる。豆腐のみそ汁は白味噌仕立てで、ほんのりと甘い。この「汁もの」がすこぶる美味く、白味噌の他に赤味噌、すまし汁と三種類用意されている。また、この汁を更に味わい深くしてくれるのが季節毎に変わる十数種の具である。鯛あら、牡蛎しじみ、鱧、くじら、ゆば、なめこ、等々有る。中でも寒い時期には「おとし芋」が身体を暖めてくれて、美味い。
 もう少し、酒を愉しみたい向きにも例えば、加茂茄子、みたらし栗、焼霜鱧、松茸、雲丹の飯蒸し、など舌鼓を打つ季節の味が豊富に有るので嬉しい限り。
 加茂川の西、河原町の東、ここ「志る幸」は一年を通じ京都旅行には外せない名店である。
志る幸 京都市下京区四条河原町上ガル一筋目東入ル
075-221-3250