46. 出雲の天満屋の小倉最中。可愛い子豚のしっぽの虜になる。

しっぽもひと役

 島根県雲南市三刀屋町に生まれた医学博士、永井隆は長崎医大助教授時代に被爆する。自らも原爆症と戦いながら多くの被爆者救護活動を続けた。白血病に侵され、床に伏せた博士は、ベッドの中で多くの小説や随筆、絵画、和歌などを発表する。「この子を残して」「長崎の鐘」など子供の頃に読んだ記憶が残る。昭和20年の長崎原爆投下から六年後、博士は昇天した。享年四十三歳と云う若さだった。
 永井隆博士が或る日、娘の為に病床で一枚の絵を描いた。それは横向きの豚の絵だった。さらりと墨で描かれた豚を見ると、お尻がまあるく、つるりとしていて、なんとも可笑しな姿であった。「おかしかー」と笑う娘に博士も笑って「おかしいやろう」と云って、豚のお尻のところにクルリとひとねじりした線を描き入れたそうだ。ひと筆のしっぽを描いてもらった豚は、何とも楽しそうな豚に変わった。そして、その絵の上の余白に「しっぽもひと役」と書き入れた。「しっぽも一役。何も役に立たないように見えるしっぽでも、本当はとても役に立つ、無くてはならないものなんだよ。」と娘さんに語ったそうである。(このエピソードは、天満屋ホームページより参照)
 昭和31年より、雲南市三刀屋町で和菓子屋を営む「天満屋」は永井隆博士の精神を受け継ぎ、この豚の絵とそっくりの最中を創りました。そして、ずばり「しっぽもひと役」と命名。奥出雲産のもち米で造った皮に北海道十勝産の小豆を使い、風味豊かな深い味わいの小倉最中だ。子豚のかたちをした最中には博士の絵と同様にくるりとひとひねりしたしっぽが型取られている。
 冬が近づき今年も十勝から新小豆が届き、最中種となるもち米も奥出雲で取れた新米を使った小倉最中が出来た。ひとつ160円、冬場ならば一週間は日持ちするので、贈答品にも良い。
しっぽもひと役本舗 天満屋 島根県雲南市三刀屋315
0854-45-2164