51.歌舞伎座の太鼓が聞こえる木挽町、割烹おさきの料理に舌鼓。

さんま明太焼き定食

 宝町と新富町の間に位置する京橋プラザに巨大な石が五つ積み上げられている処が在る。これは、慶長17年に開削された「三十間堀」の護岸跡から発掘された河岸護岸の石垣で、その石が植え込みに利用されているのだ。ここの東側一帯から歌舞伎座の裏手辺りまでが「木挽町」と呼ばれていた地域で、現在の銀座だ。
 江戸初期、江戸城を改築するため、多くの職人が集められた。この界隈には、木を挽く職人が多く集められたので「木挽町」となった。明治の中頃、歌舞伎座のある場所も東京市京橋区木挽町だったそうだ。この辺りの路地裏は今もまだ古き良き昭和の香りがする。
 コロッケが美味しい「チョウシ屋」は昭和2年創業だ。揚げたてのコロッケをコッペパンに挟んでくれる。買い食いしながら散歩も良いし、歌舞伎座での観劇の合間、「幕の内弁当」代わりにコロッケパンやハムカツパンもオツである。 
 さて、歌舞伎座の真裏に在る「割烹 おさき」はその佇まいが良い。ガラガラと引き戸を開けると石畳の奥に小さな暖簾が覗く。割烹料理屋だが昼も開いており、大変人気がある。昼12時を廻るともう一杯になる。二階に座敷も在るので、混んでいる時はそちらで合席もまた良い。
お昼の定食は天婦羅、魚、松花堂弁当などがある。中でも、是非オススメしたいのが「さんま明太焼き」定食だ。秋刀魚のワタの処にたっぷりと明太子が詰まっているのだ。これでご飯が進む々々。
 一階の小さなカウンター席ではご主人が丁寧に夜の仕込みをしている姿が気持ち良いのだ。カウンター奥の壁に架かる画賛はご主人が描いている。季節に合わせて変えているそうだが、優しそうなご主人の人柄が現れていて心和む。夜は酒を一献つけながら、季節の料理に舌鼓を打つと良い。時折、歌舞伎座からドンドンと本当の太鼓の音も聞こえて来るのが木挽町ならではの風情である。
割烹 おさき 中央区銀座4-12-4
03-3541-9601