57.冬の京都、三十三間堂を参拝し、赤尾屋の扇舞漬で一献。

赤尾屋扇舞漬

 江戸時代、各藩の弓術家が「三十三間堂」の軒下で矢を射る「通し矢」なる催しがあった。今でもこの習わしが伝承され毎年、成人の日になると新成人が振り袖、袴姿で本堂の射場にて矢を射る「通し矢」が行われている。
 三十三間堂後白河上皇が創建した仏堂で、建設当初は五重塔も経つ大層立派な寺院であったが火災で消失し、本堂のみが再建され「三十三間堂」と呼ばれるようになった。
 鎌倉時代を代表する仏師、湛慶が彫った三十三間堂の本尊の巨大な千手観音坐像は、晩年82歳の時に完成したとされている。また本尊左右に立つ千一体の千手観音立像もその中の数体も湛慶の手による像が在ると云う。湛慶は運慶と並ぶ名仏師である。京都を訪れる度に、この千手観音像に会いたくなり、像から発する計り知れぬエネルギーを貰うのである。
 さて、蓮華法院 三十三間堂を訪れた帰りに必ず立ち寄りたいのが、京漬け物の老舗「赤尾屋」だ。創業元禄十二年、約三百年の歴史を誇る京の味である。
 その昔、千二百年前、京都には各地から献上品として野菜が集まり、そこから京都独自の「京野菜」が生まれたそうだ。「すぐき」や「みぶな」など美味しい京つけものが有るが、冬ならではの聖護院かぶらを使った千枚漬けを是非味わいたい。
 赤尾屋では代々、この聖護院かぶらを漬け込むときに、扇のように広げることから「扇舞漬」と名付けている。なんとも洒落ているじゃないか。
 厳選した聖護院かぶらを利尻昆布で一枚一枚漬け込んだ奥深い味わいは後を引く旨さだ。冬期だけしか作らない手作りの味はご飯にも酒にも合うのである。
京つけもの 赤尾屋 京都市東山区本町7−21
075-561-3032