61.竹むらの粟ぜんざいで、心温かく冬を迎えることにしよう。

竹むら粟ぜんざい

 神田の須田町はその昔、国鉄中央本線が通る万世橋駅が有り、この辺りは連雀町と呼ばれ、人の出も多く、活気とに賑わいを見せていたそうだ。その後、昭和に入り、神田駅、秋葉原駅の開通と共に乗降客が減った事もあり、駅舎は廃止された。
 この万世橋駅は「交通博物館」として2006年まで沢山の方に親しまれていたが、この10月14日「鉄道の日」に合わせ、さいたま市大宮に開館した「鉄道博物館」に伴い閉館となった。今では、「神田祭り」の時以外はいたって静かな処である。
 この界隈を散策すると風情ある佇まいの店が多い。そばの「神田まつや」、「神田薮」、あんこう鍋「いせ源」、鳥すきやき「ぼたん」、そしておでん「なか川」、天麩羅「天兵」など酒好きにはたまらないのである。二年に一度の神田祭りの時などは午前中から繰り出して、各町内の神輿や山車を見物しながら、昼、夜とこんな老舗で美味い酒と料理を愉しむのもオツである。
 さて、神田須田町には呑ん兵衛だけではなく、甘いもの好きにもたまらなく良い店が在る。「竹むら」は昭和五年、神田界隈に美味い汁粉を出す店がなかったので、この地に本格的な汁粉屋として開業。それ以来甘味一筋、すべてが自家製で手作りの味を提供している。
 夏場のあんみつ、かき氷も美味しいが、冬場は何と云っても「粟ぜんざい」が良い。粟の香りと上品な小豆餡の味が口の中で一つになり、心和むひとときを味わうことが出来るのだ。また、揚げたてアツアツが美味しい「揚げまんじゅう」も香ばしく、これは手土産に良い。
 戦火を逃れた木造三階建ての家屋は古き良き大正、昭和の時代へ誘ってくれる。かつて、池波正太郎もここの汁粉を贔屓にしていたそうだ。粋な爺ぃの気分に浸り、温かい粟ぜんざいで冬を迎えて欲しいものだ。
竹むら 千代田区神田須田町1-19
03-3251-2328