64.福呼ぶカステラを持参して、新年の挨拶廻りは如何かな。

福砂屋カステラ

 我が家では、昔から法事の際には「空也」のもなかを用意する。そして、年始の挨拶まわりには必ず「福砂屋」の長崎カステラをお年賀に持って行く。
 福砂屋の創業は寛永元年。384年前と遥か昔、日本が鎖国を開始する少し前の事である。キリシタンの布教活動と共にポルトガル人からカステラ造りを伝授され、長崎の地で店を開いたのだが、その直後には徳川家光による鎖国令が敷かれ、スペインとの国交が断絶された。
 カステラの原名はカストルボルと云う。スペインはカスティーリャ地方の州名のカストルにボルは菓子の意味であり、「カスティーリャ地方のお菓子」のカストルボルが長崎の「カステラ」になったそうだ。
 福砂屋の商標には、蝙蝠(こうもり)が描かれている。元々、福の字が商標だったのだが、明治時代に十二代目の清太郎がこうもりを福砂屋の顔に定めたのである。蝙蝠の「蝠」の字は中国では「福」と同様にフウと発音するので大変めでたく、蝙蝠も慶事、幸運のシンボルとして尊重されている。元々、中国から砂糖を輸入していた福砂屋は、福の字と同じ音の蝙蝠に縁起を担いだ訳だ。
 小麦粉と砂糖、卵と云う三種類の材料だけで作る素朴な菓子は、未だにミキサーを使わず、職人が手で材料をこねる「手わざ」を守っている。シンプルな素材だからこそ、作り方は実に丁寧なのである。カステラの底に双目(ざらめ)糖が残っているのが長崎のカステラの特徴だ。一つひとつ丹精込めて焼き上げる手作りの味わいを感じながら、お茶請けに添えて貰いたい一品である。
 新春を迎えた年始回りには、是非とも「福」を招く福砂屋のカステラをおススメしたい。
福砂屋目黒店 目黒区青葉台1-26-7
03-3793-2938