67.池田屋の草加せんべいは煎餅の歴史そのものだ。

草加煎餅いけだ屋

 埼玉県草加市は足立区と隣接し、豊富な水に恵まれた中川、綾瀬川下流域に拓けた街だ。今から四百年ほど前、江戸幕府は千住と越ヶ谷間を最短で結ぶ新道を整備し、その間に近隣の村々からなる新しい宿を設けるよう命じた。これが草加宿の始まりである。
 この時整備された新道が日光道中であり、幕府公認の伝馬宿となった草加宿は、参勤交代や日光杜参、さらに一般の旅人の往来で大変な賑わいを見せた。俳人松尾芭蕉も「奥の細道」の旅でここに立寄っている。中川、綾瀬川は、近隣の村々で作られた農産物を江戸に運び、荷積み、荷揚げなどで河岸も繁盛し、大きな繁栄を遂げた。
 参勤交代で賑わう奥州街道草加宿の街道沿いに団子を売る茶店が在った。今の埼玉県草加市辺りである。この茶店に居た「おせん」婆さんが、余っただんごを焼いたのが草加せんべいの始まりと云う。
 豊かな穀倉地帯で出来る良質な米と豊かな天然地下水に恵まれ、また江戸川流域で生まれた醤油のお陰で、草加せんべいが誕生したのである。そして、茶店からせんべい屋に商いを変えた慶応元年、草加せんべいの「いけだ屋」として創業した。
 いけだ屋の煎餅は、生地造りから焼き上げまで実に丁寧に造っている。うるち白米を洗米から蒸し、つきを経て生地にするまで11もの行程を要し、焼き上げの際も昔ながらに瓦を使って押しながら堅焼きにしているのだ。
 素朴な味わいながら、こんなにも手をかけて焼いている草加せんべいはいつもお茶と一緒に備えたい一品だ。
草加せんべい いけだ屋 埼玉県草加市吉町4-1-40
048-922-2061