71.夕暮れからの新橋、ぼんそわの酒にメルシーなのだ。

ぼんそわ

 夕方5時を過ぎると新橋駅周辺は人の流れが激しくなってくる。運転手を外に待たせる様な大層な連中は新橋駅を境にして銀座8丁目方向へと消えて行く。彼らは奇麗なお姐さんたちと同伴して、8時にはクラブのソファに腰を落ち着かせる。
 そんな方々は別として、ここ「新橋」はサラリーマンの憩いのオアシス、ご存知「オヤジタウン」である。なんせ、何処の酒場に入っても安くて美味い酒と肴を味わえるのだ。烏森神社界隈は、探索するに値するべき名酒場の宝庫だし、SL広場から新橋三、四丁目界隈にはとびきりの居酒屋、大衆酒場がひしめき合っている。
 烏森口から西口通りを真っすぐ入り、3本目を右に曲がると「ぼんそわ」の小さなネオンが目に入る。リスが晩酌しているシルエットのイラストが目印だ。この界隈では可成り新しい酒場であるが、お母さんと息子さんの二人で切り盛りをしておりすこぶる評判が良い。小さなコの字カウンターは12,3人も入れば一杯だろうが、いつも皆が片寄せ合って酒を愉しんでいる。
 呑んべえに嬉しいのは、ここの「酎ハイ」だ。焼酎がグラス一杯になみなみ入っているので、まずは焼酎をそのままススり、グラスの上が少し空いた所に炭酸を入れて行くのだ。半分辺りで、十分酔うのである。これで300円なのだから「凄い!」としか言いようがない。ホッピーも素晴らしい。シャリシャリに凍ったフローズン焼酎がこれまたキンキンに凍ったジョッキに入っている。そこへホッピーを注ぎ溶かしながら呑むのだ。もうホッピー1本で焼酎3杯はイケる程の量だが、それをヤルと一気に酩酊なのである。
 「ぼんそわ」は、酒も旨いが肴も美味い。中でも「もつカレー煮込み」は食欲をソソる味だ。ここに半熟玉子を入れてもらい、崩した黄身にもつを浸けて食べるのがイイ。
 いつもここからハシゴ酒をしようと思いながら、つい杯が重なり、いきなりここで撃沈してしまう。それほどに居心地が良いのでアル。
立ち飲み ぼんそわ 港区新橋4-15-5