72.お伊勢参りの後は「福が貯まる」様、たまり餅で茶を一服だ。

伊勢たまり餅

 多くの人が訪れる伊勢神宮のお伊勢参りは、江戸時代「おかげ参り」と呼ばれ、庶民たちは誰もが一度は一生に一度はお参りしたそうである。これは、「おかげさまで元気です」と云う感謝の気持ちを持ったお参りだったそうだ。
 今から1300年程前、天武天皇が定めた「式年遷宮」は20年に一度、新しいお宮と鳥居を造り、神様が遷(うつ)る儀式であり、今もずっと続いている。五年後にはまた第62回式年遷宮祭が催される。神宮は内宮、外宮とも東西に同じ敷地があり、社殿もお宮も全て同じ形のものが交互に建て替えられる。同じモノを建てるなんて、何とももったいない感じだが、取り壊した古材は全国の神社で再利用され、無駄無く活用されているのだった。
 内宮、外宮を参拝した後は、おはらい町通りなどをのんびりと散策。あの赤福が此の地で三百年も商いが出来たのはお伊勢さんの「おかげ」と云われ、その繁栄の財を投じて造られたのが、江戸の面影を再現した「おかげ横丁」だ。大勢の庶民達がお伊勢さんで行き交う光景を思い浮かべながら歩いてみたい。
 おはらい町通りの反対側、伊勢の土産としてオススメしたいのが「五十鈴茶屋」が造る「伊勢たまり餅」だ。あの赤福と違い、こちらは毎日造る品数も少ないので、遅くに行くと「売り切れ御免」となるのも誠実で良い。
 本醸造仕込の溜まり醤油の味が程よく染みており、胡桃の食感も餅と合う。また、店の中で食べられる「本わらび餅」も美味い。座敷から庭や五十鈴川を眺めながら、のんびりしたひと時を味わう。「五十鈴茶屋」は、創業が昭和六十年と歴史は浅いが、店の佇まいといい、町に馴染んでいる様子といい、お伊勢参りの際には必ず立ち寄りたい店だ。
五十鈴茶屋 三重県伊勢市宇治中之切町30
0596-22-3012