80.豆子郎の外郎を食べ、山口で眠るウディさんを思い出した。

豆子郎のういろう

 一月の終わりまで、山口市の和菓子屋「豆子郎の里 茶蔵庵」にて「和のかたち 百六十人のイラストレーターが描く日本」展が催されていた。これは、東京イラストレーターズ・ソサエティが毎年夏恒例で開催される企画展の巡回だ。
 メンバーには、矢吹伸彦さん、上田三根子さん、ソリマチアキラさんなどイラスト界を代表する蒼々たる方々が入っている。僕の好きな方々が「和」をテーマに描いていたので、非常に興味をそそられた企画展だった。
 山口県は本州の一番端っこで在る。その昔、フォークシンガーから一変して渋谷の喫茶店『ZOO』で珈琲を入れていた”ウディ”こと、若林純夫さんが晩年過ごした場所だ。そして、奥様の敏子さんの故郷である。
 若林さんは四十を過ぎてから免許を取り、ユーノスロードスターをかっ飛ばして週末は釣りを楽しんでいたそうだ。氏が東京・下北沢のアパートに住んで居た頃、大切に飾っていた絵があった。それは、矢吹さんが彼の為に描いた絵だった。上田三根子さん夫妻、峰岸透さん、等々セツモード出身のイラストレーターたちの多くが彼と大の仲良しだった。
 元気な頃の若林さんを思い出しながら、「豆子郎」の外郎(ういろう)を食べた。外郎と云えば、名古屋の名物だが、山口では米粉では無く蕨(わらび)の粉を使う。その昔、老舗福田屋の外郎が大層評判良かったのだが、戦後の混乱で廃業。その味を惜しんだ創業者が試行錯誤して生まれたのが「豆子郎」の外郎だ。素人が造った外郎なので屋号も「トーシロー」となった訳である。
 銘菓「生絹豆子郎(すずしとうしろう)」は小豆と抹茶の二種が有り、蒸したてならではの口あたりだ。この何とも云えない食感と程よい甘さが病み付く美味さである。関東では横浜あざみ野に直営店が在るので、是非味わって欲しいものだ。
豆子郎 横浜あざみ野店 横浜市青葉区あざみ野2-12-1
045-903-9117