86.長浜安さんは、人柄同様に穏やかでコクの有るらーめんを作る。

長浜安さん

 九州は美味いモンの宝庫だ。芋に麦と美味い焼酎も揃っている。寒い冬はお湯割りでグっと躯を温めて、屋台を楽しむのもオツだ。先週も高千穂での仕事が終わり、土日の博多を遊ぼうと画策していた。ところが生憎仕事が入ってしまい金曜の最終便で東京に戻る羽目になってしまった。しかし、この街は凄い。福岡は日本の中で一番、空港から繁華街までが近いんじゃないだろうか。最終便の出発時刻は9時40分。国内線は15分程前にチェックインすればまったく問題が無い。それに今やチケットレス時代。カードをピッと置くだけで機内までスムーズに行けるのである。
 そんな訳で仕事が終わった夕方6時過ぎから酒を求めて繰り出した。泊まりだったら天神や中州、長浜と屋台街をハシゴするのだが、9時までの大切な時間である。ここは大きな移動はせず、長浜の屋台を愉しむことにする。
 タクシーで屋台街の入り口へ付けてもらうと、すぐ目の前に人気店「ナンバーワン」が在る。ここでは一口大の手作り餃子をアテに焼酎を呑む。地鶏ポンズで小腹を満たし、この日のお目当て屋台へ移動する。並びの「とん吉」で20数年働いていた大将の安さんが2年前に開いた屋台「安さん」である。どこから見ても「横山やすし」にそっくりな店主は、やっさんの激しさとは対照的に実に穏やかな人である。屋台へ座ると目の前に新鮮な食材が並んでいる。おでんも焼き物も美味い。外の風も寒さ厳しいので熱々の大根をアテに呑む。
 焼酎の杯が進むがそろそろ9時が近づいて来た。愉しい時間はあっと云う間だ。固めのバリ麺で〆のラーメンを戴いた。東京にも多く博多らーめん屋が在るのに、何故こんなにも美味いのだろう。背中を突く冷たい風も屋台の味を引き立ててくれるのだろうか。安さんが丁寧に作っているらーめんの味が、羽田に到着してもまだじんわりと残っていた。
長浜安さん 福岡市中央区港1
浜屋台街