90.春間近な気配。ひいらぎの鯛焼きを片手に青空の下を散歩。

ひいらぎ鯛焼き

 僕は毎晩酒を嗜むが、同様に甘い物にも目が無い。「甘党、辛党、高血糖!」などと冗談を云いながら、羊羹をアテに酒を呑んだりもしている。しかし、そろそろそんな冗談も本当になる時が近づいているかもしれないナ。
 饅頭、最中、団子などは商店街を散歩しながら、目に止まるとつい買い食いをしてしまうが、中でも鯛焼きは大好物である。あれこそ、買い食いの為に生まれて来たような駄菓子だと思うのだ。手に持って「さて、今日は頭から行くか、それともしっぽからかじろうか。」などと一人笑みを浮かべ青い空の下で食べる鯛焼きは最高である。
 僕の好きな鯛焼きは皮がパリパリじゃなくては駄目だ。小豆餡も余り甘いのは駄目である。デパートの地下などで売っているヤツは、皮がもう違うのである。手に持った時に鯛がヘナってしまうのだ。ふニャ鯛はイカん。矢張りカリッ、パリッとした皮をガシっと噛んで歯ごたえを楽しみ、そして中から出てくる煮崩れしていない小豆餡を味わうのが良い。
 今までは、こんな理想の鯛焼きを求めて四谷「わかば」、人形町「柳屋」、麻布十番「浪速家総本店」と足を伸ばしていたのだが、我が街恵比寿にも一年半程前から、すこぶる美味い鯛焼き屋が出来た。「ひいらぎ」の軒先ではいつも焼き上がりを心待ちにしているお客さんが並んでいる。以前、テレビの都内散策番組を見て知ったのだが、ここは姫路で評判の鯛焼き店が東京に進出したのだった。ご主人は脱サラして東京の美味い鯛焼きを巡り、試行錯誤して自分の味を見つけたそうだ。
 焼き上がるまでに30分程かかるので、近くの蛸公園で本でも読んで待つのも愉しい。折角待ったのだ、知人へ手土産にも買って行こうか。甘い物が苦手の輩でも、「ひいらぎ」の鯛焼きならきっと喜ぶ筈だ。
ひいらぎ 渋谷区恵比寿1-4-1
03-3473-7050