91.新幹線の車内一面に臭気を漂わせながら頬張る蓬莱の豚まん

551豚まん

 大阪、京都へ出張に出かけると帰りの新幹線の中での楽しみと云えば、もちろん豚まんである。蒸したての豚まんは箱の蓋を開けたとたん、もわっとした強烈な豚まん特有の香りを車内一面に漂わせるのだ。時間が無く買えずに新幹線に飛び乗った時などは最悪だ。後ろの席辺りから来る豚まんの芳香に只々悔しい思いをしたためるのであった。
 そして豚まんと云えば、もう間違いなく大阪「551蓬莱」じゃなければ駄目なのである。大阪には「蓬莱」と云う名の中華料理店が三軒在る。元々は昭和20年、大阪難の地で店を始めた三人がそれぞれ事業の拡大を目指して三軒に独立したそうだ。そしてどの店も成功を収めた。その中でも、手作りで作りたての豚まんを作っているのは551だけなのだ。冷凍食品は一切作らず、新大阪駅でも京都駅構内でも目の前で一つひとつ手作りして蒸したての熱々を販売している。
 豚肉と玉葱といたってシンプルな具材だからこそ、飽きない味なのだ。芥子を塗って、時には醤油を少しだけ垂らしたりしてガブリと頬張ると、目から喜びの涙が出る程である。(実は芥子の付け過ぎで涙が出るのだが...)これに缶ビールさえ有れば、仕事の疲れも吹き飛び、東京までの旅が素晴らしいひと時になる訳だ。
 缶ビールで一個食べ、幸せを噛みしめる。お次は缶チューハイでもう一個食べ、程よく酔いが廻った処でいつもバタンキュウと眠りについてしまう。まわりにあの臭気だけを漂わせながら、我一人幸せな気分で品川駅に到着するのであった。
551蓬莱本店 大阪市中央区難波3-6-3
06-6641-0551