97.浅草でお座敷遊び。たまには浮き世を離れたい。

茶寮一松

 たまに、お座敷遊びをすることが有る。それでも、向島や新橋辺りだと敷居が高いので、手軽に楽しめる浅草に出掛ける事にしている。浅草には「振袖さん」と云う芸子さんたちが居るのだ。
 振袖さんは平成6年に誕生した。京都なら舞妓さんだが、浅草は此の振袖さんである。浅草の夜を彩る彼女たちは座敷や宴会、パーティなどに呼ばれ美しい舞を踊るのである。振袖さんは、浅草の隠れた「顔」なのだ。
 彼女たちの舞を楽しむならば、雷門近くの「茶寮一松」が良い。此処は手軽に「振袖さん」を呼んで愉しむことが出来るので、ひと時の浮世離れを味わえるのである。
 手入れの行き届いた庭を眺め、都会の喧噪から逃れる。さながら何処かの温泉宿を訪れたような錯覚さえする処だ。風情溢れるお座敷で、艶やかな着物姿の振袖さんの舞を楽しみ、美味しい懐石料理を味わう。こんなに贅沢な時間の過ごし方は無いで有ろう。
 お座敷遊びだけでは無く、此処では結婚式や大切なお客様をお招きする時にも実に素晴らしい。自慢の懐石料理は旬の素材を用い、目で、舌で季節を感じることが出来る。京懐石とも違う、江戸浅草の料理にはおもてなしの心がたんまりと盛り込まれている。茶会の席では、本来一汁三菜を厳守するのだが、此処ではお客様を持て成す心入れとしてもう一、二品料理を持ち出す。此れを「追い肴」、「止肴」と云う。これからの季節なら鰈(かれい)や鱚(きす)の揚げ物などが出るだろう。
 芽出たい席や浮き世を忘れて楽しみたい時、「茶寮一松」は覚えておいて損しない一軒だ。
茶寮一松 台東区雷門1-15-1
03-3841-0333