98. こづちでガツンと飯を喰らい、元気に仕事に戻る。

めし処こづち

 恵比寿駅東口に在る「めし処こづち」は働く男の定食屋だ。と云っても女性たちも結構利用している。日曜も営業しているので独身諸君にも大変心強い店なのだ。
 暖簾をくぐり、ガラリと戸を開けると大将が元気な声で「毎度〜、いらっしゃい!」と暖かい声で迎えてくれる。もう其れだけで胸躍るのだ。使い込まれたL字型カウンターは20人程座れるが、ひっきりなしに入れ替わりで何時も満杯状態。
 此の店は司令塔宜しく中央に大将が立ち、其の両サイドに炒め、焼き物担当、揚げ、汁物担当と作業分担が別れている。皆、実に気持ちの良い仕事っぷりであり、どのメニューを見ても惹かれる物ばかり。ライスは親方がこっちを見ながら量を決めて出してくれる。時々、「私、大盛り!」なんて云う女のコが居て驚かされる事も有り、愉しいひと時だ。
 人気の品は「やきハム」に「肉どうふ」、そして「肉生姜定食」辺りだろうか。やきハムの何とも安っぽい処が良い。ふちの赤いハムが4枚炒めてあり、此の炒めた油が千切りキャ別に沁みている。其処へソースを掛けハムで巻いて食べるのが、僕流である。
 また、此処の肉生姜は所謂(いわゆる)ショウガ焼きでは無い。ポークソテーかとんかつに使う程の分厚い豚ロース肉を軽くサッと炒め、其れを独自の生姜汁が入った鍋に浸して煮込むのだ。ジューシーで柔らかく、他店ではまずお目に掛かれない逸品なのである。殆ど茹で豚に近いので余計な脂も落ちて実にヘルシー。付け合わせのポテサラも旨い。
 味噌汁も、給料日だけは少し奮発してとん汁にしたい。懐具合のキビしい時は、黒板に出てる定食が五百円と嬉しい限り。今日もガツンと男の定食で元気を貰い仕事に戻るのである。
めし処こづち 渋谷区恵比寿1-7-6
03-3444-3763