113.上野の竜宮城、聚楽台が4月で閉店。花見の後に訪れようか。

聚楽台

 上野公園の入り口、西郷さんの銅像の下にまるで竜宮城の様な処が在る。レストラン「聚楽台」の店内に入る前、先ず驚かされるのが入口一杯に広がる料理見本の数々だろう。日本が世界に誇るロウ細工の食品見本である。其の圧倒的な数の多さに、大抵の方々が此の場でじっと何を食べようかと考え込んで仕舞うのである。
 中に入れば、昔懐かしい桃山調のお座敷とテーブル席のアンバランスの取り合わせが実にキッチュ。まるで、目黒雅叙園を下町風にアレンジした様なのだ。 其の座敷の広い事、家族連れも多く訪れているが、小さな子供たちが座敷の廻りを走り回っている光景をしばしば見かけるのだ。 
 「聚楽台」は元祖ファミレスと云って良いだろう。和洋中の豊富な品揃えも魅力的だし、お酒だって飲めるのだから。此処の自慢は生ビールだ。都内屈指と評判の大型タンクに貯蔵された工場直送の生ビールは新鮮そのものの味わいである。
 夜行列車に乗って地方から上京した多くの人々は先ず聚楽台を訪れる。西郷さんの銅像に一礼をし、これから先の未知なる東京を此処で一休みしながら思案するのだ。そして、名物「西郷丼」が上野駅に降り立った興奮を更に盛り上げてくれるのである。
 1959年に創業し50年近くも愛された上野の顔「聚楽台」が来月21日でその歴史に幕を下ろす事になったのだ。2010年に新装開店するらしいが、もう竜宮城の座敷は見られない。とても残念な事だが、仕方ない。
 丁度今は上野公園の桜も見事に咲き誇っている。花見の後に是非此のキッチュな世界に足を踏み入れて欲しい。そしてとびきり旨い生ビールを呑み、名店との別れを惜しんでもらいたいものだ。
聚楽台 台東区上野公園1-57
03-3831-8106