116.桜の季節、ローカル線に乗って飯田の大名きんつばは如何かな。

大名きんつば

 ローカル線の旅もたまには面白い。長野県、中央アルプス南アルプスの間、天竜川の渓谷に沿って走る飯田線が実に愉しい。全長約195キロで小さな駅が94カ所も在る。また此の線にはトンネルも多く、険しい山を切り開いて開通した面影を随所に残しているのだ。
 途中の小和田駅秘境駅と呼ばれている無人駅だ。高瀬橋にかかる橋は朽ちていて今にも落ちそうだし、秘境駅の呼称に相応しい処である。また、金野駅に降り立つと、視界の先は一面の野原。何処が駅なのかまるで判らない程、草ッ原と一体化している駅だ。
 中央アルプスに囲まれた伊那谷の中心、飯田市には菓子屋が多い。和菓子、洋菓子を問わず実に沢山の店が在る。信州飯田は水も良いし澄んだ空気にも恵まれた素晴らしい処だからだろうか。また、日本のほぼ真ん中に位置しているため、東西の茶会の席での菓子が此処から広がったとも云われている。
 さて、飯田の銘菓と云えば、真っ先にいとうやの「大名きんつば」が浮かぶ。単に僕がきんつば好きと云う事もあるが、此れが一番なのである。いとうやは信州特産のそば粉を生かした「本そば饅頭」や秋冬の「栗きんとん」など美味しい銘菓を作っている和菓子屋だ。その中でも、一番人気なのが「大名きんつば」である。北海道産の小豆がぎっしりと詰まっており、一つひとつ薄皮を丁寧に焼いてあるのだ。甘さも程良くてお茶受けにとても合う。
 南信州は此れからが桜の見頃である。飯田にも天龍峡の桜、薬師堂の枝垂れ桜など素晴らしい銘桜も数多い。ローカル線で桜前線を旅し、土産に此の「大名きんつば」は如何だろうか。
丘の街の菓子処 いとうや 長野県飯田市本町2-15
0265-24-1372