118.春うらら、保谷駅まで栗まんじゅうを求めて散歩も愉しい。

栗まんじゅう

 今から7年前の2001年、多摩地方の田無市保谷市が合併し、「西東京市」が生まれた。江戸の頃から青梅街道の宿場町として栄え、五日市街道も通るこの周辺一帯は、明治、大正と農業が中心であった。戦後の高度成長を見据えた西武鉄道の都市開発により、其の後はひばりが丘団地を筆頭に東京のベッドタウンと化した地域だ。
 僕は従兄弟が練馬区和食屋を営んで居るのだが、練馬駅から数駅行けば保谷駅である。西武池袋線に乗り、保谷駅で降り西友を過ぎたら駅前通りに出る。其処を右に真っすぐ歩くと数分の処に和菓子の名店「眞榮堂」が在る。
 此処が作る和菓子は何れも大変美味しいのだが、其の中でも群を抜いて旨いのが銘菓「栗」だ。所謂、栗まんじゅうなのだが、手に取った瞬間に判るしっとり感が兎に角凄いのだ。
 甘さを抑えた白餡の中に大粒の栗をまるごと一つ入れ、その上から薄い生地で包み焼き上げている。薄くて柔らかい生地は、イガから割って出たばかりの栗を彷彿させる様な焦げ茶色の艶を出してある。食べた瞬間から、口一杯に栗の香りが広がって、しっとりとした薄皮生地と栗、そして白餡の三位一体の甘い芳味が日本人のDNAを刺激してくれるのだ。
 「すや」の栗きんとんや「エス・ワイル」の和栗モンブランならば、栗本来の持つ風味を生かした菓子なので秋の旬が良いのだが、栗まんじゅうの場合は栗を甘露煮して、更に白餡も加わるので、秋を待たずしてでも十分に美味しい。
 そんな訳で旨い栗まんじゅうが食べたくなると、池袋からヒョイと電車に乗るのである。
御菓子 眞榮堂 西東京市東町3-5-1
042-422-5059