121.ホルモンをアテに呑むボール。今日もカドヤの暖簾が揺れている。

カドヤ

 東京・下町の大衆酒場で「ボール」と云えば、炭酸がキリっと効いた下町ハイボールが出て来る。摩訶不思議なエキス「天羽の梅」がブレンドされた焼酎を炭酸で割った焼酎ハイボールだ。下町に行くと各店独自のブレンドが有り、それぞれ皆微妙に味わいが違うのもまた呑み比べが出来て愉しいものである。
 恵比寿駅ロータリーから左に廻り、元ボーリング場方面に歩くとすぐ右手に「カドヤ」の白い暖簾が風に揺れてるのが見える。此処はまだ日の浅い店であり、渋谷等で小洒落た酒場を展開している処の系列店だが、中々どうして居心地の良い酒場なのだ。看板にも大きく「大衆酒場」と銘打って居るだけに、マカロニサラダ、煮込み、ハムカツ等々、居酒屋お馴染みメニューも沢山揃っている。そして、此処では、あのボールが呑めるのだ。氷が入っている事だけが下町と違う所だが、肝心の味は上出来きだ。
 「カドヤ」のもう一つのウリは、カウンター前に広がる鉄板で焼かれる様々なホルモンである。本場、大阪・新世界の名物「ジャンジャン横丁」の鉄板ホルモン、其のディープな味を初めて東京に持って来た店だろう。鉄板の上で焼かれるマルチョウや赤センマイ等をコテコテのソースで絡めて、モヤシに合わせるのである。殆どソースの味なのだろうが、此れが安酒にはピッタシ合うのだナ。更に追い打ちで大阪西成特製ヒシ梅ソースをぶっかけると旨いのだ。
 此処は居心地も随分と良い。最近特に思うが、店は余り造り込まないほうが良い。過度なデザインなど要らないのだ。計算された様に普通のデザインを貫いた恵比寿「カドヤ」の佇まいは、もうすっかり此の街に馴染んで居る。まるで数十年も此処で営業しているようだ。外を吹く風が心地良い此れからの季節。扉を開け放したカドヤで呑むボールは、さぞかし旨い事だろう。
大衆酒場 カドヤ 渋谷区恵比寿南1-8-3 谷沢ビル1F
03-5773-3601