123.街の洋食屋ヤナギヤで昼から呑むビール。大人の些細な幸せだ。

　武蔵小山と云えば、長く続くアーケードの商店街「パルム」の方に行く事が多いのだが、駅の反対側にも隠れた名店が在るのだ。
　創業昭和35年、年期の入った親爺さんが作る街の洋食屋が「ヤナギヤ」だ。コックコートが格好良過ぎる程に合うシェフが三人で切り盛りしており、其の存在感を味わうだけでも此処に来た甲斐が有るってものだ。そして何よりも作る料理が何れも大変に美味いのだ。
　洋食屋に行く時にいつも困るのは、店に行くまでの道のりの間に食べたかった料理も、いざ席に着いてメニューを見ると目移りして仕舞う事である。定番のハンバーグ、ハヤシライス、ドリアも素晴らしい。少し贅沢したい時などはビーフステーキや車海老のフライなどが良い。
　土曜日の遅いブランチにはビールを戴きながらメニューをじっくりと眺めるのだ。何皿か単品を取って、昼から酒を呑み、〆にはボリュームのあるセット物を頼むのが好きである。ハンバーグ、ポークソテー、コロッケに白身魚のフライ、子供の頃にデパートの屋上で食べた様なゼイタクな盛り合わせなのだ。
　更に此処は何が良いって、洋食に欠かせないドゥミグラスソースの味が素晴らしいのだ。きっと手間を惜しまず時間を掛けて作っているのだろう、奥行きの有るコクなのだ。ポークソテーには、此のソースをたっぷり使って玉葱を炒めたソースが豚肉に絡まっており実に旨い。付け合わせの千切りキャベツをドゥミグラスに浸し、しんなりしたところをアテにビールを飲むのだ。此れはたまらん美味さなのだ。
　ほら、もう何を頼もうか悩んで仕舞う事だろう。武蔵小山から26号線を目黒郵便局方面に歩けば数分の処に在るので、週末の散歩の前に是非老舗の洋食屋ヤナギヤで腹ごしらえをお薦めしたい。
ヤナギヤ　目黒区目黒本町3-5-15
03-3712-4184