138.立夏を迎え、江ノ島が気持ち良い。富士見亭でトビと風に舞う。

江ノ島丼

 暦の上で五月の今頃を立夏と云う。二十四節気の一つだが、七十二候では初候の頃で「蛙始鳴」、蛙が鳴き始める季節の事だ。都内の公園の池でも沢山のおたまじゃくしが元気一杯に蛙になる時を待ち望んで泳ぎ回っている。
 今年は雨続きのゴールデンウィークであったが、最後の一日は都内でも25度を越す夏日となった。端午の節句には、大勢の子供達が天高く風に泳ぐ鯉のぼりに希望の夢を膨らませていたことだろう。
 梅雨入り前の此の季節は湿度も無く歩くのが気持ち良い時期だ。小田急線に乗って片瀬江ノ島駅で降りると、すぐ目の前に大きな海が広がっている。弁天橋を抜け、屋台が並んでいる通りを歩き、長い大橋を渡ると江ノ島だ。青空を望むと空高くトビが悠々と舞っている。まるで江島神社までの道案内をしてくれている様だ。
 正面の青銅の鳥居をくぐり参道を歩く。朱の鳥居を登り、日本三大弁財天を奉る江島神社へお詣りをするのだ。細い道を歩き、奥津宮で最後の参拝が済めば、後は心置きなく青い海と高い空に囲まれて一献つけるのが良い。
 江ノ島の南端、岩屋へ降りる手前の高台、稚児ヶ淵の真上のに在る「富士見亭」は相模湾を眼下に一望出来る絶景の食事処だ。ビールで汗を拭い、焼き蛤やアジのたたきをアテに日本酒を戴く。
 窓辺の席に着けば、屡々(しばしば)風に浮遊するトビと同じ目線になる。程良く酒が廻ってくれば、自分もトビと一緒に空を舞っている気になるから不思議だ。此処の名物「江ノ島丼」はサザエを卵でとじたドンブリ飯だが、地元のなんとも素朴な味わいが、訪れる度に食べたくなる味なのである。
富士見亭 神奈川県藤沢市江ノ島2-5-5
0466-22-4334