161.文庫本片手に1時間半、六厘舎の脇で至福の時を待つ。

六厘舎

 お盆休みの平日、家でゴロゴロしていても仕方が無いし腹も減って来たので、日差しが強い午後2時過ぎ、無謀にも大崎百反通りに在るラーメン屋「六厘舎」へと向かう。大崎駅から細い坂道を上がり、店の軒先まで辿り着くと、相変わらず人、人、人の人だかりだった。
 ざっと数えて50人以上並んで居たが、此処までやって来たのだから喰わずに帰れるか。だが、最後尾は百反通りに面した辺りで日陰が全く無いのだ。
 カウンター12席だから、おのずと何回転目に自分が入れるかが判って仕舞う。あぁ、1時間以上は待つ事になるのだなぁ、とペットボトルで冷気を取り、ひたすら本を読んで待つ。ただ、この店は12人毎に一気に入れ替わるので、自分の列に近づく時の喜びが大きい。
 そして、結局席に着いたのは、午後3時40分。一時間半以上も待ったのか。それでも、待った甲斐が有る程の素晴らしい味の「つけめん」なのだ。
 先ずは、とろりと濃厚なスープに超極太の麺を浸けてズズっといってみる。続いて、海苔の筏(いかだ)の上に乗った魚粉をスープに溶いて、個性的な刺激のつけ汁で麺を楽しむのだ。
 行列100人超2時間待ち、が日常茶飯事の「六厘舎」では、この日はまだ少ない方だったのだろうか。あれだけ待って、喰らう時間は10分程度なのだから随分と贅沢な時間の過ごし方だろうか。此処はラーメンの美味さも抜群だが、働く男達の実に爽やかな事。最後のスープを戴く時の威勢の良い返事に、また来たくなるのである。
六厘舎 品川区大崎3-14-10
03-5434-0566