48.素朴な笹だんごの味は、今でもずっと古里お袋の味がする。

笹だんご

 新潟に住む従兄弟から今年も新米と共に大好きな笹だんごが送られてきた。田舎の手作りの味だが、町で売られている団子顔負けな程旨いのだ。
 新潟地方では、古くから戦国武将、上杉謙信が兵糧として中国のちまきを真似て造らせたと伝えられている。
 新潟越後は米どころだが、郷土名産の「笹だんご」も有名である。現在、新潟市内では50軒程、県内では300軒前後の店が笹だんごを製造販売していると聞く。しかし、それ以上に農家の方々や農協などで造られている笹だんごの方が断然多いそうだ。笹だんごは越後の家庭の味であり、古里の味でもある。餅いっぱいに広がる笹の葉、蓬(よもぎ)、イ草の香りと小豆の甘い味。
 俵万智が詠んだ歌がある。
    イッセイのシャツ着こなせる若者がふるさと自慢に言う笹だんご
 都会に出て、どんなに立派に小洒落た大人になっても田舎から送られてきた母手作りの笹だんごを頬張れば、きっと泪で目が潤むことだろう。蓬餅を笹の葉で包み、イ草で縛っただけの素朴な団子である。
 手造りの笹だんごはそうそう直ぐには味わえないが、新潟江口だんご本店は、家庭で作る笹だんごさながらの味わいだ。越後の女性達が一つひとつ手でイ草を巻き、蒸籠(せいろ)で後蒸しする。創業明治三十五年の老舗は、1500坪の敷地内に築100年の古民家を再生させており、作り処では笹だんごを作る匠の姿を拝見出来るので、新潟に行く際には足を運ぶと良い。
 江口だんごの笹だんごは五個単位で全国へ届けてくれる。素朴な段ボール箱の蓋を開くと、蓬と笹の香りが部屋中へふわっと広がってくるのだ。(写真は従兄弟の手作りである)
江口だんご本店 新潟県長岡市宮本東方町熊之宮52-1
0258-47-4105