110.桜咲く季節、野方秋元屋で待つ間も外吹く風が心地良い。

秋元屋

 都内には沢山のもつ焼き屋が在る。中でも、嘗(かつ)て食肉市場が在った地域の周辺には新鮮で美味しいもつを食べさせてくれる名店が多く存在して居る。食肉文化会館友の会のホームページを見ると、1940年代に三ノ輪、大崎、寺島、千住、野方、玉川の「と場」が食料統制を目指し、合併して現在の「都立芝浦屠殺場」として発足したそうだ。三ノ輪、千住、向島など今ももつ焼屋が多く残っているのは、その当時の名残なのである。
 そんな老舗が多い中、野方に4年前暖簾を開いたもつ焼き屋が、大変な人気を見せている。西武新宿線野方駅を出て最初の路地を曲がると紺地に白抜きの「やきとん 秋元屋」の暖簾が風に揺らいでいるのが見える。週末は午後4時に開店なのだが、開店と同時にすぐ満席になって仕舞うのだ。親方の秋元さんはもつ焼き好きが高じて、自分の店を持って仕舞ったと云う強者である。
 席に着き、先ずは名物「焼酎ハイボール」か瓶ビールで喉の渇きを潤すのが良い。此処はサッポロ赤星を置いて居るのも嬉しい。やきとんは何れも新鮮なモツを丁寧に下処理を施してあり、モツが苦手と云う輩も一度食べれば好きになる筈だ。塩、タレも良いが、此処の自慢は他店では余り見かけない味噌ダレである。カシラ味噌を一度食べたら、病み付きに成る筈だ。
 シャリシャリに凍ったキンミヤのホッピーでガツンと一撃をくらい、串が焼けるのを待つ。その間にもポテサラ、ガツ酢、煮込みなどすぐ出る肴も充実してるので、口が寂しく成る事など無いのである。
 桜が咲き始めたこれからの季節、秋元屋の暖簾下はオープンエアになり、爽やかな風を感じながら、旨いやきとんで酔いしれる事が出来るのだ。
秋元屋 中野区野方5-28-3
03-3338-6236