130.新橋で讃岐うどん。何十年経っても酔い覚ましは此の一杯だ。

さぬきや本舗

 此の数年、讃岐うどんブームが到来し、皆が挙(こぞ)って本場香川県まで足を伸ばし地元の名店を食べ歩く方々が増えてきた。
 そして、東京ならではの威力で香川の名店で修行した店や毎日本場讃岐から打ち立てのうどんを空輸して出す店まで在る。こうして舌の超えた通人も増えており、東京の讃岐うどん店も激戦になって来ている。
 今でこそ、此処東京でも至る処に讃岐うどんを食べさせてくれる店が沢山有るが、30年前の僕が上京したての頃は未だ本格的な讃岐うどんの店など少なかった。其の中で、新橋駅烏森口から程近い西口通りを入ってすぐ左側に在る「新橋さぬきや本舗」は当時から腰の強い本場の味を手打ちで提供してくれる店だった。
 此処のうどんは本当に美味しい。ただ腰が強い訳では無いのだ。少し柔らかくモチモチしていながら腰が有り、そして喉をつるりと流れるのである。
 これからの季節は、冷たい田舎うどん、ぶっかけうどん、かんなめうどん、冷やし胡麻汁うどんが良い。暖かいうどんではきざみうどんが好い。八丁味噌が効いた浸けダレで食べるかんなめうどんは酔い覚ましにもピッタリだ。そして、此処は味は云う事無しだが、朝5時まで開いて居るのが何より嬉しいのである。
 烏森口界隈は働くサラリーマンの天国だが、安い居酒屋のハシゴ酒で心地よく酔い、〆に炭水化物が欲しくなる。若い頃は決まってラーメン屋の暖簾をくぐったものだが、聊(いささ)か歳を取ってくると胃にもたれにくい食を欲するのだ。そんな時は喉越しも爽やかで腰が強く食べた充実感に浸れる讃岐うどんがおススメだ。
新橋さぬきや本舗 港区新橋3-21-10
03-3432-7373